イベントレポート hello, popup in LINDA『日常にときめく』
2021年6月6日(日)〜6月7日(月)に、関西では初めてのPOPAP企画展「hello, popup〜日常にときめく〜」を開催しました。会場は大阪・中崎町にあるLINDA HOSTEL 106。
今回のテーマは「日常にときめく」。当たり前のようにやってくる日常ですが、何気ない一瞬一瞬は、本来ときめきで溢れているのではないでしょうか?ふと見つけた、いい色、いい香り、いい手触りは、驚きや喜びを感じさせてくれます。忙しい時ほど、身の回りのときめきに気が付きません。だからこそ今回は、アーティストさんたちと作品を通して、普段見逃してしまっているかもしれない「日常の美しさ」に触れて、ときめきを感じてもらえるようなポップアップになりました。
一緒に展示を行ったのは、コラージュアーティスト・soko hoshinoさん、デザインユニット・iikaoriさん、イラストレーター・ままならないまいさん、写真作家・MIYO OGAWAさん。日常からインスピレーションを受けて作品を作るアーティストさんたちです。
4人のアーティストさんたちの想いを伺いました。
■コラージュアーティスト・soko hoshinoさんにインタビュー
ーコラージュアーティストとして、どんな作品を作っていますか?
「身につけられる作品」をコンセプトに作品を作っています。
家の中の壁に作品を飾っていたのを見て、作品たちは家の中の景色しか見れないのか、と思うと悲しい気持ちになって。そこで、作品たちに外の世界を見せてあげたい!と思い、身に付けられる作品を作ろう!と考えたのです。これまで、アクセサリーやネイルシール、お財布やポシェット、などを作ってきました。使ってもらう人には、作品と一緒にお出かけしてる感覚になってもらったり、楽しい気分になったりしてもらえたら嬉しいなと思っています。
ーどんな瞬間からデザインをつくるのですか?
日常のちょっとしたことにときめいて、そこからインスピレーションを受けて、コラージュを作っています。
例えば、お散歩中きれいなものを見つけた時、いい風が吹いた時、夕方の風景を見た時、かわいい色の靴下はいた人を見つけた日、とか、ちょっとしたいい気持ちになった瞬間の感覚を大切にしています。
ーsokoちゃんの作品の色合いが素敵です!
色が好きなのです!この色づかい気持ちがいいな、と思うような好きな色を詰め込んでいます。例えばこのハンカチは、好きな色や線を詰め込みました。
ーほかにはどんなグッズを作っているのですか?
新作のZINEを作ったのですが、これまでの私自身の作品を集めた作品集のようなものに仕上がりました。一般的にコラージュというと、雑誌を切って貼るようなイメージが持たれています。使われるのは具象的な写真ですね。でも私が作っているのは、抽象的な写真を使ったコラージュです。色と線と、面を組み合わせて、気持ちがいいと思うものを作っています。このやり方でデジタルコラージュをしてる人はあまりいないのですが、一番いいと思うポイントをいつも探しています。ぜひ手にとってゆっくりと見てもらえたら嬉しいです。
ーグッズへのこだわりや想いは何ですか?
「持ち運ぶ」ことをしてもらえたらなあと。作品にも外の世界を見てほしい。同時に、身に付けることで、一緒に旅をしているような嬉しい気分になったり、アクセサリーをつけている日だけでも心強く過ごしたりしてもらいたいです。
結局は私自身が作りたいものを作ることを大事にしています。実際、作品と一緒にいたいし、使いたい、そして作品のそばにいることが楽しいし嬉しい。これからもそんなものを作り続けたいなあと思っています!
■デザインユニットiikaoriさんにインタビュー
ーiikaoriはどんなブランドですか?
iikaoriは京都芸術大学デザイン科の学生が運営するユニットです。いい香りがしそうなグラフィックをテーマに作っています。人の五感や感覚、心理学に関心があることから、共感覚やクロスモーダリティをテーマにグッズを制作しています。
ー共感覚に着目されたのが興味深いです!
文字情報から香りを感じる、という共感覚を持つ友人がいるんです。視覚表現は人の心に訴えかけて動かす力があることに興味を持ち、そんなデザインをしたいなと思いました。忙しい日々を過ごす中でも、日常を丁寧に暮らしたり、気分が上がるものを作ったりすることで、日常の様々なことへの感度が高まるものを作りたいと考えています。
ー「いい香りがしそうな」というコンセプトのきっかけは何ですか?
ユニット結成当初は、お店に来ることで、お風呂に入った後のようなほっこりした気分になってほしいと考えていました。そこから派生して、癒しを与えたいと考えた時に、香りは人の気分に作用するものだと思いました。単純に香りを作るよりも、一工夫加えたい。「そこには存在しない感覚を引き出すことができるか?」がテーマであり、大学でビジュアルについて学んでるので、質感や手触り感を視覚化することにたどり着きました。
ー今回の見所を教えてください!
今回はフラワーアーティストさんとコラボをしています。また今回は、絵画のような展示を意識しました。油絵の静物画という技法に倣って、テーブルの上に花瓶を置いたり、影を出したりして展示しました。絵画も視覚情報であり、想像させる力を引き立たせてくれるんじゃないかと思っています。
ーグッズについてこだわった部分教えてください!
全部アナログで手作りしました。バッグについてはシルクスクリーンという製法で手間をかけて作りましたね。フラワーアーティストさんも手作りでお花を作ってくれたりと、温かみを感じてもらえるようなグッズに仕上げました。
ーステッカーやスマホケースには、様々なフルーツを描かれてますが、テーマはありますか?
旬やフレッシュさを感じてもらえるようにしてます。今の時期だと初夏のフルーツ。また梅雨の時期なので、雨の日でも使って楽しめるクリアバッグを作りました。
ー今後やっていきたいことは何ですか?
日常使いできるグッズを展開していきたいですね!Tシャツのように日常使いできるものを作り、まとってもらいたいです。
ー「いい香りを纏う」いいですね!
■イラストレーターままならないまいさんにインタビュー
ー今回出展しているグッズについて教えてください!
今回のPOPUPでは新作のTシャツやバッグ、刺繍作品を主に販売しました。例えばバッグは、イラストをプリントしただけのものではない、ハンドメイドのものを作ろうと思ったことから作ったグッズです。裁縫が得意な友人と共に、一枚の絵を描くように、布で遊ぶように、作りました。
ーグッズを作るときに大切にしてることは何ですか?
グッズは人の人生に寄り添えるものなので、手に取ってくれた人だけの見え方ができたり思いを持てるような余白のあるものにしたいです。
なのであまりグッズ自体に意味を持たせないように頭に浮かんだものをストレートに作品へ変換していくように制作しています。
同じイラストでも人それぞれの感じ方によって何通りもの違う作品になれるっておもしろくて好きです。制作している時は、わたしのグッズを身につけた人が誰かに「それなんだろう」って不思議に感じてもらえたらいいな〜みたいな妄想しています。
ー作品と出会った人が感じる感情を大切にしているのですね
人と人が出会うように、グッズに出会う時も、第一印象の感覚で「これ可愛い!」とか「これなんだろう?」と興味を持ってもらうことを目指しています。作品と友達みたいな関係になってほしいなと思っているんです。グッズに出会って、愛着を持って身につけてもらえることを願っています。そして、「気づいたらずっと使ってた!」というような長く愛して付き合いをしてくれたら嬉しいです。
ー「ふとした考えごとや生活のことをユニークに、ロマンチックに可視化する」というコンセプトが素敵です!
私は映画の主人公だと捉えて生きている時があります。何にもない日であっても、今日は風が気持ちいいなあ、と思うだけでも、その人の人生の物語の1ページだと思っています。しんどくて辛い時であれば、映画の主人公のどん底の時期と重ね合わせます。そして人生谷の時期があっても、いつかはハッピーエンドがやって来るんだと思えると、未来に希望を持てたり、今を信じて生きたりすることができますよね。
だからどんな時であっても、すぐそこにある小さなロマンスを見つけて、ときめくことを大切にして生きていきたいなって。当たり前すぎて気がづかないことにも幸せのたねを見つけられたら、みんながハッピーになれるんじゃないかって思っています。「すぐそこにあるロマンスを見つける」ことは私の人生のテーマ!だから作品にもそんな想いを込めています。
ー今回ポップアップに参加してみてどうですか?
今回のポップアップで、なんでか分からないけど愛着がわいて好き!とお客さんに言ってもらえて、感覚的に好きだとお客さんに思ってもらえていることをリアルに感じることができました。私の想いがお客さんに届いているのだと実感が湧く機会で嬉しかったです!
■写真作家MIYO OGAWAさんにインタビュー
ー「ネガを炙る」シリーズの写真を作られていますね。
きっかけの一つは、フィルム写真を撮る中で、残すことは大事だけど、どんどん溜まっていくネガに対して「ネガたちを昇華させてあげたい」と思ったことです。もう一つは、写真を見返す時、「当時の気持ちやリアルな感覚を鮮明に思い出すことができないか?」という問いを持っていることがきっかけです。
そこでネガを炙ることで、思い出を頭に焼き付けるイメージで再記憶させることができるのではと考えたことが制作につながりました。
ー今回展示している作品のテーマを聞かせてください!
京都亀岡にある廃墟化した建物で写真展(グループ展)をすることになり、作品の題材を考えていた時に、廃材の中に埋もれているネガを見つけました。持ち帰ってじっくり見てみると、日付が記載されていて30年前に撮られたものだとわかりました。この写真たちは30年間もその廃墟に埋まっていたのかと思うと切ない気持ちになり、ネガに写っている時間を昇華してあげたい気持ちになりました。
また持ち帰ってネガを何枚も見ていると、写真に写っている全く知らない人たちが、他人じゃないように思えてきたんです。その人たちがどんな人たちだったかを知りたい。容姿や状況が写真で分かっても、中身はどんな人かは分からない。
哲学者・ロランバルトのある本に、「写真は過去の存在の確実性のみである」という言葉があります。写真とは、その事物がかつてそこに居た/あった、ということを示すものでしかない。
私が見つけたネガに写っていた人たちもそうで、30年前に存在したということしかわからない。じゃあ、どんな人か知りたいと思ったときに、「想像」するしかなく、想像すればその人に近づけるんじゃないかと思ったんです。
そこで、30年たった今、ネガに写っていた人たちは何をしているのだろう?京都駅なら主要だし今でも通って生活してるんじゃないか?などと想像して、京都駅付近でその人たちの架空の現在をスナップしました。
ーネガを炙るシリーズを中心に、他にも作品を作られていますね。
ネガシリーズ以外にも、身の回りのことや違和感を感じたことなど、色々制作してますね。一貫して時間や日付に執着があるんですけど。写真に時間はつきもので、撮ったときの時間を思い返すものだと捉えています。自作を振り返ると、撮った時と見返した時のその間の時間や、自分とコンピューターが提示する時間のラグや、私と祖母の体感する時間など、とにかく「時間」を作品にしていることに気付きました。時間というのもそもそも曖昧なものなんですが。これからも時間にテーマに作品を作っていくのだと思います。
あとは人間にしか表現できないことですかね。物語や想像とか、もっと小説みたいなことを写真で表現するには、、、と最近は興味を持っています。
ー時間をテーマにした作品作り、これからも楽しみにしています!
今回の関西ポップアップイベントでは、たくさんの方に来ていただきました。アーティストさんと会話をして、背景にある物語を知ってもらったり、お客さん同士で繋がりができたりと、温かく盛り上がった時間でした!関西でまた開催して行きたいと思います。