イベントレポート hello, popup vol.06『花瓶とドライフラワーで日常に彩を 』
今だからこそありのままの”日常”を愛そうー。
OPEN NAKAMEGUROにてポップアップイベントを開催しました!
hello, popup vol.06は、 「もっと身近に感じて欲しいー日常を彩ることを、日常にアートを添えることをー」がテーマ。
"日常”そして時間"ー。誰にとっても身近にあるもの、でもそれっていったい何だろう…?
今回、おふたりのアーティストがそんな問いを受けとめ、捉えなおし、表現し、それらを融合した空間が叶いました。
花瓶と写真、そして文字を手掛けたのは、アーティスト・Misiiさん(@mmisii)。
そして、ドライフラワーはフラワーアーティスト・flower and peopleさん(@flower_and_people)。
訪れたひとは、初コラボながらも繊細に混じり合った時間に息をのみ、しばし身を浸していました。
モチーフは、とある場所のとある誰か。明けかけの早朝、ぬるいお昼下がり、深い夜ー。
暮れの移ろいを写し取りながら、それぞれの”日常”に流れる”時間”が、すくいあげられていきます。
彼女たちの世界のなかで、たしかに生きるペルソナの息づかいや残り香。
それは、私たちにも、同じ問いをすっと投げかけてきました。
日常とは?アートとは?日常にアートを、とは?
今回の作品をつくりあげたおふたりにとっては?
おふたりのこれまで、今回のイベントにかける想いを伺ってみることにしました。
※本イベントは、感染予防を徹底し、以下の条件で実施いたしました。
・収容率50%を超えた場合の入場制限
・Peatix優先無料入場チケットを発券者の優先的ご案内(制限時)
・混雑しやすい夕方を避けた、早めの時間の利用の喚起
・消毒、検温、席数の制限、換気など予防対策の徹底
・カフェ利用時の原則マスク着用
・体調不良時の利用お断り
■アーティスト・Misiiさんにインタビュー
ーアーティストであるMisiiさんは、あるものにとらわれず、たくさんの活動をなさっていますよね。
メインは音楽で活動しているんですけど、でも音楽だけしかない、と思いたくないという気持ちから写真、絵という表現の幅を無意識に広げていったところはあります。
ーどれに対しても、コンセプトであるセルフラブを貫いているのでしょうか。
そういうことになりますね、セルフラブをテーマに、愛の共有をゴールにしているので音楽では無茶苦茶に貫いてます。苦しいくらい。
でも、絵に関して言えば、セルフラブをテーマにしているつもりは実はなくて。
そこに描いたもの、その結果がもう”私そのものだ”と思っていますね。
ー期せずしてした結果、セルフラブになっている、ということですか。
そうですね。絵は、いってみれば分身ですね。全部が愛おしい。
ー分身!なるほど。セルフラブというコンセプトも気になります。
Misiiさんにとって、それは模索している存在ということになりますか。
というよりは、自分の中に築き上げてきたセルフラブがあってそれをどう表現するか、というところでさらに向き合いまくってる感じです。
だからこそ、その表現を制限したくない、というのがあってたくさんの表現に気づいたらチャレンジしているのが今です。
ーひとつに留まらないスタイルが光りますね。
それでも、アーティストMisiiとして、ここは、というこだわりはありますか。
オリジナルでいること、ですかね。やっぱりこだわりがあんまりなくて。
しいて言うならオリジナルであることです。表現のどこかにMisiiが宿っていたいと思います。
普通だと、こだわりって、何かひとつがありますよね。
そういった意味では、わたしはむしろ、こだわりがないことがこだわり、とも言えますかね。
ー今回の作品づくりでは、Misiiらしさをどこに宿したのでしょうか。
今回の展示では、いい意味で雑にしてみるところがポイントです。あまりきちっとしたくなくて。
空もそうだし。なぜかというと、日常にアートというテーマだから。
Misiiの文脈で表現すると、このようになりました。ぶわああってなってる感じが好き。
ーそれ、聞きたかった部分です。”日常”ってどんなものですか。
そうですね、こだわりと一緒で、○○が”日常”だ!これだ!というはっきりとしたものはないんです。
たぶん、次に日常を切り取るとしたら、これとはまた違った表現になると思いますし。
でもこれは、私にとってもそうなのだけれど、みなさんも同じなのではないかと思います。
変化していくものであるという認識ですね。
ーMisiiさんの思う”アートのある日常”とは、どんな日常なのでしょうか。
私の日常には、私自身アートをやってるからが故に音楽をはじめとしたアートがあって、それが私にとっての日常。
でも、アートのある日常で言いたいのはそういうことではないんですね。
そのスケールをみんなに押し付けたいわけじゃない、というんでしょうか。
日常には、小さくて見えてないものもあって。アートでだったら見れるものがあると思っています。
もちろん、私も見えてないものがあるから、それを一緒に見ていきたい、それがアートのある日常です。
理想は、私にとってアートがある日常はこういうものですって提示した時、見てくれた人の日常にその人なりの形として持ち帰ってくれること。
アートが絶えることなく、バトンのようにまわっていくようなイメージ。
ーとすると、アートって何でしょうか。
アートって敷居の高いものに見られがちだけど、そうではないと思っていて。
それこそ私はそう思われてるものを日常にしたいから、願望でいうともっと身近なものとして感じて欲しいし、
そうあるべきものだと生きていて思う。
同世代が、でなくとも同じ人間が、アートを生み出してるんだよっていうことを伝えたい。そう考えると近いから。
アートは人が人間として生きる上でとても必要な要素だと思う。
生み出す”作品”だけでなくて考え方、感性、関わりあうこととかもそうだから私はみんな生きてるだけでアートしてると思ってます。
ー今回そんなテーマで作品をつくってみて、何か新たな可能性は生れましたか。
普段やってる音楽も楽しいと思ったことがなくて。
なんだろう、自分と向き合いながら生きていくことって私は苦しいことと思うんです。嫌いな部分だとか、自分に納得できない部分が見えるし…。 でもそれが生きてるってことだと思うんです。
周りの人からの愛を通して生きていることも実感できますし。
今回、一本一本描くのがすごく苦しい、というとマイナスな言葉になっちゃうけど、そうだったんです。
そして、できたときは嬉しかった。
実は絵は趣味でかいていたけれど、今回この機会に一気に描き上げる中で、この苦しみは音楽のそれだと感じました。
ああ、同じなんだと思いました。趣味だったものががひとつまた軸になった瞬間でした。
ー今回のコラボについても伺いたいです。コラボ、というのはいかがでしたか。
実は、まったく珍しくないんですよ。普段は音楽がメインですが、そこでもコラボが大半です。
私はザ ライブハウスのようなハコでやらないんですね、あまり音楽性やスタイルと合わないというのもあって。
そうしていったら、誰かのアートと並んで音楽をするスタイルが気持ち良いなあって合致して、自然と確立していきました。
友だちはもちろん、初めての人のときもありますが、近しいものを感じれば、コラボってできあがるんですね。
たとえ相手のコンセプトがセルフラブじゃなくても、その人と話したり、作品を聴いたりすればわかる、やれるかやれないか。
それがあれば、十分です。
ーさすが、Misiiさんです…。
今回は、flower and peopleさんとはどのような部分で被っていると感じましたか。
実は、直前まであまり関わるタイミングが多くなくて。。
でも、クリエイトしている過程をみて、「すきだな、感性」と思いました。直感、ですね。
というのも、つくる過程でそのひとの雰囲気って漂っているじゃないですか。
そこに、私は近しいもの、通ずるものを感じていました。
ーこれを終えて、こういう領域に挑戦したいというものはできましたか。
今回は花瓶とお花だけでしたが、やっぱりもっと文字を入れていきたいです。
文字がなかったら、分からないこともある。
というか私はシンプルが合わないからいい感じに混ぜ込みたい。それが私の色だなって。
だから多分音楽も絵も写真も言葉も私の中でMisiiイコールになってるんだと思います、表現していく上で。
日常にアートを、を今後続けていくにあたってもっと必要な範囲で美しく色付けてあげたい。
みんなと自分とアートをしていきたい。今の私が観てる感じてる景色や感情は周りの愛なくしては触れたくても到底触れられなかったものだから。
より多くの人の心を動かせるような、見てるだけじゃなくて心を動かせるような、そんなものをつくりたいね、とflower and peopleさんとも話していました。
ー最後に、展示を前にしていますが、ずばり、お気に入りはどれですか。
んん~!ぜんぶ!!(笑)
全部描いた時に納得しました。ぜんぶ含めて手放したくないし。でも手放す、そこに意味があるんですよね。 ほかのひとの日常になるから。繋がっていく。
■フラワーアーティスト・flower and people / 望月萌々子さんにインタビュー
ーフラワーアーティストのきっかけは何だったんですか
田舎生まれで身近にあったお花が大好きだったのもあり、 幼い頃から祖母に華道を習っていました。
大学生になり華道の先生になるための免除式に出席した際に
”今まで私たちのために命を預けてくれて有難うー”
お花を生け愉しんだあと、そんな気持ちを込めて行う花供養を目の当たりにしたとき、ショックを受けました。
こんなに近くにあって、だいすきなお花なのに、このお花がわたしの手元に来るまでの背景を全く知らない、、、と。
そこから、私の生産者さんやお花屋さんを訪ねる旅がはじまりました。
そこで、たまたま、次の世代に残したいお花を、と大地から作り替えて育てている、当時珍しいオーガニック花農家さんに巡り合ったんです。
もちろん、無農薬ということだから、できあがるお花は、ばらばらの花弁や曲がった茎をしています。でも、彼(オーガニック花農家さん)のつくったお花が、とにかく愛おしくみえたんですね。
一方で、完璧に欠けのない花とか、まっすぐな茎といった、”整った”綺麗さに価値をおく花業界自体の仕組みがあって。というのも毎日とてつもない量のお花が卸売されるので。
無理もないんだけれど、そんな世界では、彼の花を届けられない、とか、想いがうまく伝えらえない、お花の命に人間が価値をつけることによる歪みに違和感を感じました。。
市場の中で「美しい」と見なされている”作られた価値観”と、人も花も含めたすべてにおいて、そのいのちがそのいのちとして生きる美しさに対して私が自然に抱くようになった「美しい」と感じる気持ち、この相反する”美しさの価値基準”が「生産と消費」に対して関心を持つことに繋がりました。
もし、お花屋さんがもっとメディアとしての役割をもっていたら人びとをもっとつなぐことができるんじゃないのか?そうして在学時代に企画したのがflower and peopleのはじまりです。
ー当時はメディアが主だった、ということですか
そうですね。
卒業後、お花取り巻く仕組みを肌で感じたいと考え、花屋で働きました。しかし、そもそも商売であり消費を促すことが仕事の前提にあること、職人気質、体力勝負の世界のなかで、気付かぬうちに体や心が蝕まれていってしまいました。
当時わたしはグラフィックデザインもしていたのですが、お花にしてもグラフィックにしても、消費を過度に加速させる一歯車として自分の手仕事が組み込まれていく感覚に痛みを感じるようになりました。
その仕組みの中では、自分自身の気持ちや介在するすべての命に対して誠実にいられないこと、わたしが一番大切にしたかったことすらも不必要で価値のないものだと思わされてしまう。
わたしが生きていたい世界は、この世界にないことをその痛みがわたしに気づかせてくれました。
だったら自分で創り出すしかない、と。
そこから、flower and peopleがまた動き始めました。そして今があります。
ーflower and peopleは当初のメディアとしての役割とはまた違ってみえます。
いま、表現したいもの、とは何なんでしょうか。
人も花も変わらない、もっと言えば動物も自然環境も地球も星々も、そのすべての命が命である美しさを愉しむための場でしょうか。
そんな私自身が見たい世界を、出会えた人たちと一緒に作り出していく場であり、自分の中の”世界の起源に触れたい”という根本のところにある好奇心そのものであり、その表現のための場でもあります。
”お花のお顔はどこを向いているのか、この子の顔の正面を探してみなさい。本来根があることによって生きられるものが、根から離されたときに、一人で立っていられるのか、それとも助けが必要なのか。自分で水を吸って生きられるのか、もっと水を吸いやすくするために私たちの手助けが必要なのか、花に寄り添い聞いてみなさいー"
おばあちゃんが教えてくれたことです。
お花の形をみていると、太陽がどの方向にあり、どう伸びたかったのか教えてくれますよね。
そういう意味では、私たちってお花の目になることができます。
同じことがいろいろ言えて、鳥の羽ばたきが今日の風向きや風の強さを教えてくれたりもします。
虫の目になり、鳥の目になり、波の目になり、風の目になることができる。
そういう目をもてることって、共感する力、イメージする力、繊細さ、傷つきやすさ、痛みを感じる力とも言えますよね。
人を人たらしめるそういう力を、哀しいことに今の時代では、強さよりもむしろ「弱さ」とみなすように感じます。でもそれらは本来人の持つ強さであるはず。
それが持つ可能性は私の中ではずっと変わらない真実です。人が人であること、人が自然であること。そんな与えられた生を愉しむことがすべてのものへの還元であると信じています。
自分の中の変わらない真実を草花に力を借りて表現をしていけたらいいなと思っています。
ーテーマである”日常”や”時間”をどのように捉え、今回の作品へ投影していますか。
時間が過去から未来へ流れるという時間の捉え方ではないものを私は感じていて、今回その表現に挑戦しました。植物が芽を出し、やがて花を咲かせる過程を目にしたとき、人間は概念として時間を知覚しますよね。でもそこに内包されているものって。太陽の光、温度、湿度とも言える。そうすると私たちが捉えている時間というのは、地球の息づかいと言えるんじゃないかな、と。
時間というものが過去から未来へ流れるものではなく、ただそこにあるもの、と捉えると、私たちの肉体としては今この場所この次元の一点にに縛られているけれど、精神は過去を回想できたり、未来にとばしていけたり、一瞬が一時間みたいに長く感じられたり、はたまた一瞬に感じられたり。ただ存在する果てのない時間のなか、”果て”を与えられ放り出され、それぞれの命固有の温度・湿度・光を内在したもの。それは=個人の命の物語であり=太陽や星々の動き、地球の息遣い、である、とも捉えることができるのではないだろうか、と。
ーその表現を伝えるのって、本当に大きくて途方もない試みのようにも聞こえます。
そうですよね。そんな気もするけれどでもこの考えでいくと、それでいいんです。
私というひとつの時間が、地球の一つの呼吸だから。それが今回私が捉えた「時間」だから。
それぞれに与えられたいのちの物語。私のいのちの物語は何だろう、今回そう試みました。
ー今日が初展示、それもまたコラボ展示でしたが、いかがでしたか。
何度かzoomを通してMisiiさんともお話した上で、いよいよ展示の会場でお会いしました。だから、いい意味で、あまりコラボという感覚はなかったです。
それでも感覚が通じるところがあって、私の制作過程をみて、次回も一緒にできることがあるのでは、というお話になりました、次にもつながって嬉しい限りです。
ーまたコラボが見られるなんて…!楽しみです。今回の企画でご自身の可能性も見えましたか。
こうしてお花を魅せるとなると、どうしてもお花に目が行ってしまって、「綺麗だね」「可愛いね」ということばになりがちというのを感じました。
もちろんうれしいのだけれど、それまでのお花の哲学だったり、過程を届けにくくなってしまう場合もあるなと。
「どう考えて、何を感じてこうしたの?」という会話があればいいなあ、来てくれた方の導線のつくり方を、もっと考えられるなあ、なんて思いました。
ーネットでのオーダーでは、ひとりひとりと向き合える分、それが叶っているような気がします。
そうですね。このサービスではお花制作を代行しているのではなく、制作していく過程自体を大切に愉しむ経験を作りたいと考えているので、そのプロセスは大切に組み立てています。
普段のオーダーは頼んでくれる方がいてその人の想いを紐解く形で進めていきますが、展示というと完全な自分の想いの発信になります。その違いを今回感じました。
出発点は違うけれど、表現したいものはいつも同じ。どちらも同じように大切に向き合っています。
会期は終了いたしましたが、OPEN NAKAMEGUROにて、おふたりの作品を販売中です。
1週間ほどの展示を予定しています。足を運んでおふたりの息づかいに触れてみてはいかかでしょうか。
【参加クリエイター(順不同)】
アーティスト・Misiiさん
公式HP:@misii | Linktree
Instagram:Misii(@mmisii) • Instagram写真と動画
フラワーアーティスト・flower and peopleさん
公式HP:flowerandpeople (studio.site)
Instagram:flower and people《catalog》(@flower_and_people) • Instagram写真と動画
OPEN NAKAMEGURO
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OPEN NAKAMEGUROのコンセプトは[開かれた場所]
中目黒という街にも、そしてこの場を活用して表現をしたい人にとっても、開かれた場所をつくりたいという思いから誕生しました。
いつもと同じコーヒースタンドがそこにあって、でも時としてプロモーションスポットになり、展示会場や撮影スタジオにもなる。
そんな変わらないものと変わっていくものが共存する空間を軸に、ここにしかない価値を生み出していきます。
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