服を通して「思想」を形にする。RIKUMUKAEの挑戦
BRAND INTERVIEW
POPAPが注目するブランドを取り上げるFEATURE企画。今回は、「Invisible to Visible」をコンセプトに掲げるファッションブランド「RIKUMUKAE」のクリエイティブディレクターRIKUさんにインタビュー。
経済学部を中退し、現在はグラフィックデザイナーやモデルとしても活動している。そんな彼がファッションブランドを立ち上げるに至った経緯や、ブランドとして何を目指していくのか伺いました。
ファッションや服をデザインしたい
─ これまでの経歴を教えてください。
大阪の大学に通っていたんですけど、22歳で辞めて東京に来ました。面白法人カヤックという会社に入り、約1年広告プランナーとして働いたのち独立。今はRIKUMUKAEというブランドと、グラフィックデザイナーやモデルをしています。
─ 元々ファッションに携わりたいと思ってたんですか?
服を作りたいという思いはあったのですが、美大や専門学校に行かず四年生大学の経済学部に通っていたんです。それでも服は作りたかったので、独学で服を作ったり、上京してからは原宿にある社会人向けのファッションテック専門学校・TFL(=Tokyo Fashion technology Lab)に週1で通い、そこで基本的な服づくりの部分を勉強しました。
TFLはファッションとテクノロジーをメインとした学校なので、設計や製図をコンピュータで行うためのツールであるCAD(=Computer Aided Design)を使ったり、個人的にCGを勉強していました。僕は、いわゆるファッションデザインよりも、もっとファッションや服自体をデザインし直すことに興味がありました。
─ なるほど。服を作るだけがデザインじゃないですよね。
造形として美しい服を作るよりも、ファッションをもっと広義な視点でデザインしたいです。そのような視点からも、ANREALAGEの服作りをすごく尊敬しています。
─ なんでそういった発想になったんですか?
まず大前提として、服を作れないからです。そもそも服は既にたくさんあるし、普通の服を作っても面白くない。便利なツールも増えて作ること自体簡単になっている反面、ファッション業界ではサステナブルやエシカルが話題に上がっている。僕はこれ以上ブランドが出てこないことがサステナブルだと感じているんですけど、でもそれではつまらない。服って確実にパワーがあるものだから、大量生産ではなくて、思想を形にすることに意味があると思うんです。僕が作っていきたい服は、ぱっと見の美しさ以上に、ストーリーとしてのおもしろさや消費の仕方とか、捨て方、作り方などの新しい提案も包含した物としてもありたいと思っています。
ブランドを運営することの難しさ
─ 去年ブランドを立ち上げた感想を教えてください。
めちゃくちゃ大変でしたね。チームの体制を整えることが1番大変で。基本的に僕の自己資金のみで作っていて、量産しようとも思ってないからお金を回収する予定もない。チームメンバーに支払うお金や場所を借りる資金がない中で環境を整えていくことが難しかったです。
─ 具体的にはどんなところが?
メンバーに細かいディティールの部分でもっとわがままを言いたくても、時間もなければ無償で手伝ってくれてる方もいて、そこに対してどこまで言っていいのかというところで悩みました。休日に手伝ってくれてたりするので、どこまでわがままを言えるのかとか、もっとここを整えたいと思っても自分ではできないというところがストレスでしたね。
─ それでも作りたいと思うことがすごいです。
なんだかんだみんなで作ることは楽しいんですよね。みんな休日返上して、お金のためじゃなく楽しいからやってるからこそ、全員ハッピーな気持ちで終われるのが嬉しいし、そうするためにはどうしたらいいだろうって考えています。
─ ブランドとして目指している姿はありますか?
まだビジネスとして成り立ってるわけではないし、模索中です。ただ、満足のいくモノが作れたら量産して売るのではなく、面白くて新しい提案をしているブランドとして、アートディレクションの仕事などができたらいいなと思っています。それこそたくさん売るということはたくさん捨てるということなので…。そこに対するいい答えが出ない限りは量産しづらいです。
今後は、ちゃんと流通できる仕組みも作りたいし、継続的にやっていけるようなラインを出すことが今年の目標です。作品は出していくけど、どちらかというと仕込んでいきたいと思っています。
執筆:小倉優穂