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森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」を10月18日より開催


  • 森美術館 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53階 Roppongi, Tokyo, 106-0032 Japan (マ⁠ップ)

森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」を10月18日より開催

森美術館は開館20周年を記念して、2023年10月18日(水)から2024年3月31日まで、「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」を開催します。

産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると言われています。環境聞きは喫緊の課題であり、国際的なアートシーンにおいても重要なテーマとして多くの展覧会が開催されています。

本展では、国際的なアーティストによる歴史的な作品から本展のための新作まで多様な表現を、四つの章で紹介します。第1章「全ては繋がっている」では、環境や生態系と人間の政治経済活動が複雑に絡み合う現実に言及します。第2章「土に還る」では、1950~80年代の高度経済成長の裏で、環境汚染が問題となった日本で制作・発表されたアートを再検証し、環境問題を日本という立ち位置から見つめ直します。第3章「大いなる加速」では、人類による過度な地球資源の開発の影響を明らかにすると同時に、ある種の「希望」も提示する作品を紹介します。第4章「未来は私たちの中にある」では、アクティビズム、先住民の叡智、フェミニズム、AIや集合知(CI)など様々な表現に見られる、最先端のテクノロジーと古来の技術の双方の考察をとおして、未来の可能性を描きます。

本展のタイトル「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」は、私たちとは誰か、地球環境は誰のものなのか、という問いかけです。人間中心主義的な視点のみならず、地球という惑星を大局的な視点から見渡せば、地球上には幾つもの多様な生態系が存在することに改めて気付くでしょう。本展では、環境問題をはじめとする様々な課題について多様な視点で考えることを提案します。また輸送を最小限にし、可能な限り資源を再生利用するなどサステナブルな展覧会制作を通じて、現代アートやアーティストたちがどのように環境ききに関わり、また関わり得るのかについて思考を促し、美術館を対話が生まれる場とします。

出展アーティスト

エミリヤ・シュカルヌリーテ《沈んだ都市》 2021年 ビデオ・インスタレーション 9分33秒

*アーティスト名のアルファベット順 

モニラ・アルカディリ、ニナ・カネル、ジュリアン・シャリエール、イアン・チェン、アリ・シェリ、アグネス・ディーンズ、ジェフ・ゲイス、ハンス・ハーケ、シェロワナウィ・ハキヒウィ、ピエール・ユイグ、鯉江良二、ヨッヘン・ランパート、松澤宥、アナ・メンディエータ、中西夏之、ケイト・ニュービー、西條茜、エミリヤ・シュカルヌリーテ、谷口雅邦、ダニエル・ターナー、アピチャッポン・ウィーラセタクン、保良雄、ほか

■ 開催概要

展覧会名:森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」
主催:森美術館
企画:マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター)、椿玲子(森美術館キュレーター)*第2章ゲスト・キュレーター バート・ウィンザー=タマキ(カリフォルニア大学アーバイン校美術史学教授、美術史家)
会期:2023年10月18日(水)ー2024年3月31日(日)
会場:森美術館(東京都南区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
入館料:

*事前予約制(日時指定券)を導入しています。専用オンラインサイトから「日時指定券」の購入が可能です。日時指定券の販売開始日は決まり次第ウェブサイトでお知らせします。
*当日、*当日、日時指定枠に空きがある場合は、事前予約なしでご入館いただけます。
*表示料金は消費税込
*東京シティビュー(屋内展望台)、スカイデッキ(屋上展望台)、森アーツセンターギャラリーへの入館は別料金になります。
*本展のチケットで、同時開催プログラムもご鑑賞いただけます。
同時開催:「MAMコレクション017:さわひらき」
     「MAMスクリーン018:カラビン・フィルム・コレクティブ」
     「MAMプロジェクト031:地主麻衣子」
一般のお問い合わせ:Tel:050-5541-8600(ハローダイヤル) 森美術館ウェブサイトwww.mori.art.museum

保良 雄
<fruiting body>
2022年
インスタレーション
展示風景:Reborn-Art Festival 2021-22:利他と流動性[後期]
撮影:斎藤太一
※参考図版

ニナ・カネル
<マッスルメモリー(7トン)>
2022年
海洋性軟体動物の殻を利用した造園材料
サイズ可変
展示風景:「Tectonic Tender」ベルリーニッシェ・ギャラリー(ベルリン)
撮影:Nick Ash
※参考図版

■ 本展のポイント

● 環境危機に対する現代アートからの応答

世界共通の喫緊の課題である環境の危機に対し、現代アートがどのように向き合い、私たちの問題としていかに意識が喚起冴えるのか。世界16カ国ほど、約35人のアーティストが作品に込めたコンセプトや隠喩、素材、制作プロセスなどを読み解き、共に未来の可能性を考えます。

● 日本社会や現代美術史をエコロジーの観点から読み解く

ゲスト・キュレーターのバート・ウィンザー=タマキ氏による「第2章:土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」は、世界各地で開催されている環境問題に関する展覧会の中でも、本展を日本の文脈から特徴づける章です。1950年代から1980年代に日本のアーティストが当時社会問題となっていた公害や放射能汚染問題にどのように向き合ってきたかを紹介します。

● モノよりネットワーク:世界が注目する国際的なアーティストの新作多数

できる限り作品というモノ自体の輸送を減らし、作家本人が来日し、新作を制作してもらうことを計画しています。アーティストを文化の媒介者と捉え、モノの移動よりも、人的なネットワークやつながりを構築することにエコロジカルな価値を見出します。新作は日本でのリサーチに基づいて制作され、展示室のスペースの半分以上を占めます。

● 日常を再利用する

本展では、身近な環境にあるものを素材として再利用した作品が多く出展されます。森美術館を一つの環境と捉えて半径1キロメートル四方に生えている植物を調査・採取して押し花にするジェフ・ゲイスの作品、六本木から銀座への道すがら発見したものを組み込んだケイト・ニュービーのインスタレーション、東京近郊の病院の廃材を素材としたダニエル・ターナーの絵画インスタレーション、ゴミを高音で溶解させたスラグと大理石を並置する保良雄のインスタレーション、貝殻を観客が踏みしめる感覚と音を体験できるニナ・カネルの作品など様々です。なお、観客によって粉砕された貝殻は、展覧会終了後、セメントの原料としてさらに再利用される予定です。

● 環境に配慮した展示デザイン

前の展覧会の展示壁及び壁パネルを部分的に使用し、塗装仕上げを省くなど環境に配慮した展示デザインとなっています。また、世界初の100%リサイクル可能な石膏ボードを採用するほか、再生素材を活用した建材の使用、資材の再利用による廃棄物の削減など省資源化により組みます。

■ 本展の構成

第1章 全ては繋がっている

本展が定義する「エコロジー」は、「環境」だけに留まりません。この地球上の生物、非生物を含む森羅万象は、何らかの循環の一部であり、その循環を通してこの地球に存在する全てのモノ、コトは繋がっています。最初の章では、そのような循環や繋がりのプロセスを様々な形で表現する現代アーティストたちの作品を紹介します。

ハンス・ハーケの、社会や経済のシステムと、動物や植物などの生態系とをつなぐ視点で撮影された記録写真の展示や、貝殻という有機物がセメントなどの建材に変換されるプロセスを来場者自身に追体験させる、ニナ・カネルの大規模なインスタレーションは、私たちが世界の広大で、複雑に絡み合う循環(エコロジー)の中にあることを想起させてくれるでしょう。

ハンス・ハーケ
<海浜汚染の記念碑>(<無題>1968-1972/2019年の部分)
1970年
デジタルCプリント
33.7×50.8 cm
Courtesy: Paula Cooper Gallery, New York
©︎ Hans Haacke/ Artists Rights Society (ARS), New York

第2章 土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー

日本は戦後の高度経済成長期において、自然災害や工業汚染、放射能汚染などに起因する深刻な環境問題に見舞われました。本章では、日本の社会や現代美術史をエコロジーの観点から読み解くべく、1950年代以降の日本人アーティストの作品や活動に注目します。彼らが環境に注目します。彼らが環境問題に対してどのように向き合ってきたかを、50年代、60年代、70年代、80年代と時系列に考察しながら、各時代の代表的な表現方法の変遷を辿ります。

再利用した日用品を卵型のアクリル樹脂に詰め込んだ、中西夏之の<コンパクト・オブジェ>(1962-1968年)。また、土を素材に原爆や反原発を主題とする作品を制作した鯉江良二の<土に還る>(1971年)では、作家自身の顔が崩れ土に還る姿が表現され、谷口雅邦は1980年代に制作した自然と人間との関係性を表現した活花を再現提示します。

鯉江良二
<土に還る(1)>
1971年

32×50×50cm
所蔵:常滑市(愛知)
撮影:怡土鉄夫

第3章 大いなる加速

人類は、地球上のあらゆる資源を利用して文明を発展させ、工業化、近代化、グローバル化を押し進めてきました。しかしながら産業革命以降、加速度的に発展した科学技術や産業社会は、「人新世」という新たな地質学上の区分が示すように、短い期間で地球環境を変化させました。本章では、こうした人類にとって喫緊の課題を批判的な視点で分析しつつ、現状を取り巻く文化的、歴史的背景を題材とする作品を通じて、より広い視点から地球資源を人間の関係を再考します。

モニラ・アルカディリの養殖真珠を主題とした新作には、自然の生態系に深く介入する人間の欲望と夢が表現されています。保良雄の展示では、何億年もかけて自然に形成された大理石とゴミを高温で溶解したスラグとを並置することで、異なる時間軸を表現してみせます。この他にも古代の神話から個人的な経験、社会問題、環境危機まで、それぞれの作品が、地球資源と人類との多様な関わり合いを示唆します。

モニラ・アルカディリ
<恨み言>(イメージ図)
2023年

第4章 未来は私たちの中にある

環境危機は私たち自身の「選択」が招いた結果です。現状を打破するには、私たち人間が在り方を改めることが必要でしょう。未来にはどんな選択肢が残されているのでしょうか。本章では、非西洋的な世界観を讃える作品、モダニズムの進歩と終わりのない成長原理への疑問、アクティビズム、先住民やフェミニズムの視点、精神性(スピリチュアリティ)、デジタル・イノベーションがもたらす可能性とリスクなど、私たちが頼みとすべき、さまざまな叡智を顧みながら、地球の未来を再考します。

アグネス・ティーンズは、1982年にニューヨークのマンハッタンに麦畑を出現させることで、開発主義へ疑問を呈しました。ジェフ・ゲイスの六本木ヒルズのコミュニティと協働するプロジェクトでは、雑草を癒しをもたらすものとして再認識させます。また、西條茜の複数の人間で共有し演奏する楽器のような陶器は、新しい共生の可能性を示唆します。

西條 茜
<果樹園>2022年 陶 130×82×82cm
展示風景:「Phantom Body」アートコートギャラリー
(大阪)2022年
撮影:来田 猛

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