プレス内覧会「マーク・マンダース ーマーク・マンダースの不在」 at 東京都現代美術館
作家本人の意向に沿って構成された空間が観覧者を引き込みます。本邦初公開となる作品も展示されます。
東京都現代美術館では、現代のアートシーンに独自の位置を占める作家、マーク・マンダースの、国内美術館では初となる個展を開催します。
マンダースは1986年、18歳のときに、自伝執筆の試みを契機に得たと言う「建物としての自画像」という構想に沿って、以降30年以上にわたって一貫した制作を続けています。その構想とは、自身が架空の芸術家として名付けた、「マーク・マンダース」という人物の自画像を「建物」の枠組みを用いて構築するというもの。その建物の部屋に置くための彫刻やオブジェを次々と生み出しインスタレーションとして展開することで、作品の配置全体によって人の像を構築するという、きわめて大きな、そしてユニークな枠組みをもつ世界を展開しています。
本展は、作家本人の構想により、展示の全体を1つの作品=想像の建物のインスタレ―ションとして構成するものです。
■ 開催概要
日時:2021年3月20日(土)- 6月20日(日)
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(5月3日は開館)、5月6日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 3F
住所:東京都江東区三好4丁目1−1
観覧料:一般 1,500円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 1,000円 / 中高生 600円 / 小学生以下無料
■ 内覧会レポート
《未焼成の土の頭部》(制作年:2011 - 2014)
インスタレ―ションとして構成された、本展はまるで想像の建物に迷い込んだかのよう。30点余りの作品が次々と観覧者を迎え入れます。最初に現れるのが《未焼成の土の頭部》です。
脆そうな質感と艶やかな部分の対比、異素材で構成されたような違和感が展示される多くの作品に見られ、観覧者を引き込みます。
《マインド・スタディ》(2010 - 2011)ボンネファンテン美術館蔵
《マインド・スタディ》は、本邦初公開となるマンダースの代表作。細部まで目を向けることによって、より作品を楽しめます。
《乾いた土の頭部》(2015 - 2016)
風化したように見える点が特徴的です。床に散らばった粘土もまた作品の一部。観覧者によって動かされたブロンズの破片は彼ら/彼女らの痕跡。それはテーマにある「不在(Absence)」を想起させます。展示される作品は、作家が不在であっても自律的に存在し続けます。
《舞台のアンドロイド》(88%に縮小)(2002- 2014)
88%に縮小されてもなお、大きな作品。見る角度や視点の低さによって、作品の表情が大きく変わってきます。
《乾いた土の頭部》(2016 - 2017)
作家の意向に沿って構成された静かで穏やかな空間(本展)は、マンダースの作品1点1点を鑑賞できる貴重な機会です。また、それらの作品を通して自分を見つめ直すこともできるでしょう。
春を迎えるこの時期に、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
■ 作家プロフィール:マーク・マンダース Mark Manders
1968 年、フォルケル(オランダ)生まれ。現在、ベルギーのロンセを拠点に活動。
1988年から1992年までアーネム市芸術大学でデザインを学ぶ。
1986年より「建物としての自画像」と称した独自のコンセプトを展開。その想像の部屋に置かれる彫刻やオブジェを制作し、一連のインスタレーションとして発表している。
また、1998年にはロジャー・ヴィレムスらとともに出版社「ローマ・パブリケーションズ」の設立に関わり、自身のアーティストブックや展覧会カタログをはじめ、他のアーティストの書籍も多く手掛ける。作家の代表作である架空の新聞もこの出版社で制作されている。
展覧会としては、これまで、サンパウロ・ビエンナーレ(1998年)、ドクメンタ11(2002年)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2013年)など多くの国際展に参加。2020年にはオランダのボンネファンテン美術館で大規模な個展が開催。