【Creative Camp】アートスペースの視点から見たポップアップから見るポップアップ─ForEverが創る、新たな文化の交差点

【Creative Camp】アートスペースの視点から見たポップアップから見るポップアップ─ForEverが創る、新たな文化の交差点

今回POPAP編集部は、下北沢にあるunForme Drawingroom「ForEver」への取材を行いました。オーナーのHAジメさんに、空間のコンセプトやコミュニティ作りへの取り組みについてお話を伺うことができました。

店内では飲み物や食事が提供されているほか、作品の展示やミニマムなステージも併設されているため、アートを通じて交流が生まれる特別な場所です。

「ForEver」はアートギャラリーではなく「形のない応接間」

—「ForEver」はどんな場所なのでしょうか?

HAジメ:Googleマップのタグライン上では「カフェ・喫茶」となっていますが、私たちは「unForme Drawingroom」と定義しています。
一般的なアートギャラリーは作品を売る場所で、アートスペースという言葉もまだ定義が曖昧ですよね。アートとはそもそも多様なものを受け入れる“受け皿”のような存在だと思っています。

フランス語の「アンフォルメル(unFormel)」には、不定形や流動的という意味があるのですが、私はずっとその概念が好きだったんです。社会も人も常に変化し、二度と同じ形にはならない——まさに「諸行無常」のようなものだと思っています。

「ドローイングルーム(drawingroom)」という言葉には、「VIPをもてなす場」という意味があります。そこに、絵を描く「ドローイング(drawing)」の要素を掛け合わせ、「形のない応接間」という意味で「unForme Drawingroom」と名付けました。アートを取り入れたスペースでありながら、敷居が高くなく、誰もが気軽に訪れて交流できる場にしたいと思っています。

—アートを知らない人でも気軽に入れる場所、というようなイメージでしょうか?

HAジメ:そうですね。アートに詳しくない方や、難しいと感じている人にも気軽に触れてもらえる場にしたいです。だからこそ、食事も提供してカフェとしての側面も持たせています。例えば週末には、下北沢に遊びに来た若い方がふらっと立ち寄られることもありますよ。

「ForEver」があつかう、アートの定義

—この場所であつかうアートはどんなものなのでしょうか?

HAジメ:いわゆる現代アートですね。
作品単体の美しさだけでなく、その背景にある哲学や思想、作者の生き方が重要だと思っています。現代アートは、日常では口にしないような精神性を表現する場でもあります。誰かの作品を見たことで自分の考え方が変わったり、気持ちがときほぐれたりすることがあるんですよね。そういった場があることで、コミュニティがもっと楽しくなると思うんです。

—コミュニティ作りのために意識している取り組みはありますか?

HAジメ:ここで生まれるコミュニティは偶然広がっている部分が大きいんです。その一つの例が『シモキタ清掃部』という活動ですね。下北沢ってポイ捨てが多くて、街が汚いイメージがあったんです。それを何とかしたいという思いで若い人たちと一緒にゴミ拾いを始めました。

—街の清掃活動が、アートとどうつながるのでしょう?

HAジメ:私は25年間建設業界で職人をやってきたんですが、職人の世界では“場を清めること”がすごく大事なんです。作業を始める前に掃除をすることで、良いものが生まれる。これは、アートを展示する空間づくりにも通じる考え方ですね。

さらに掃除をすることで、社会問題や海外の環境問題にも関心が広がるんです。でも、やってることは単純に“掃除している”だけなんですよね。そのシンプルさがいい。清掃活動が終わった後に、若者同士で討論会をしたりもします。正直、偽善っぽいと感じる部分もあるかもしれませんが、地域を綺麗にしたいという純粋な気持ちが根底にあります。

—アートと社会問題の接点としての清掃活動、というわけですね。

HAジメ:はい。そして今後は、もっと幅広い世代の人に関わってもらいたいと思っています。例えば、親子向けのワークショップを開いたりして、お子さん連れでも入りやすい空間にしていきたいですね。

スペースのデザインに込めた工夫

—空間デザインにおいて、特にこだわったポイントはありますか?

HAジメ:一番意識したのは、正面を作らないことです。レジカウンターや家具の配置も斜めにしたり、無作為に見せた配置したりしています。イベントを開催するときもどこを正面にするかを柔軟に決められるんです。展示作品だけでなく、サウンドアートやパフォーマンスもその場限りの表現として扱いたい。下北沢には、ライブハウスがたくさんあってすでに人前で表現をしている人たちがたくさんいるので、彼らが自然に混ざり合う場所にしていきたいですね。

今後の展望——2050年に「芸術と服飾の大学校」を
—未来について、どんな展望をお持ちですか?

HAジメ:長期的な目標として、2050年4月に『芸術と服飾の大学校』を開校する予定です。その前段階として、2040年の5月に個展を開いて100点の作品を並べたいと思っていて、2020年に思い立った目標です。

私がもともと建築の分野にいたので、都市計画のように20年、30年単位で考えることが自然なんです。人生の“仕上がり”を決めて、そこから逆算して動く。だから、この大学校の構想も単なる夢ではなく、具体的な計画として進めています。

—とても壮大な計画ですね。

HAジメ:アートって、これまで社会や宗教への批判や内省的なものとして扱われることが多かったと思うんです。でも私はアートをもっと優しく、楽しく、暖かいものとして広めたい。そのためにこの場所があるし、未来の計画もあるんです。

ここまでのインタビューを通じて「ForEver」はアートを特別なものとして遠ざけるのではなく、誰もが触れ、感じ、考え、そして参加できる場を大切にされているのだと感じました。ここで交わる人々の思いが、新たな創造のきっかけとなり、やがて大きなムーブメントへと広がっていくのかもしれません。  

「ForEver」がアートの新しい形を模索し、人と人をつなぎ続ける今後の展望にぜひご期待ください!

【店舗情報】

ForEver
https://www.instagram.com/for.ever_shimokita/
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目3−12 友和ビル

【オーナープロフィール】

HAジメ
青森県出身。16歳の時に東京都現代美術館で開催された「建築の20世紀」という展覧会で衝撃を受け、バウハウスの思想に感銘を受ける。芸術家を志し自由の森学園へ入学。自身の表現を模索する中で職人の技術とアートの融合を考え、宮大工としての道を選ぶ。「遺書のように、自分が何を考え何を残したいのか」をテーマに作品制作を行い、観る人へイメージを与えることを重視する。現在は下北沢のForEverの運営を行い、アートと人々が交わる場を提供する傍ら、地域の清掃活動やワークショップを通じて幅広い世代が関われるコミュニティづくりにも力を入れている。

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